皆さんは普段利用しているオンラインサービスに対してどのように対価を払っているでしょうか。私はTwitterやFacebook、Telegramのように基本無料のサービス(対価は広告閲覧など)に割いている時間が多いと思いますが、その次に多いのはサブスクリプション方式ではないでしょうか。今日は暗号資産払いでサブスクリプションを実現する問題点や解決案、そしてそもそもサブスクリプションというモデル自体の妥当性を検討していきます。

暗号資産払いでサブスクリプションを実現する問題点

ビットコインやイーサリアムを例に考えてみましょう。ユーザーの操作抜きにサブスクリプション(定期課金)を実現する方法はどのようなものが考えられるでしょうか。日常的な決済をレイヤー1のトランザクションでやることの不経済性を無視しても、基本的にレイヤー1の送金はプッシュ型なため、事業者が勝手に引き出す銀行振替(引き落とし)のようなことはできません。引き落としモデルを実現するために事業者のアドレスやスマートコントラクトなどに事前にチャージしておいて、定期的に事業者に一定額が割り当てられるモデルは、まとまった資金を拘束される面から見て「返金可能な前払い」であってサブスクリプションとは呼べないでしょう。

取引所など一部のウォレットには定期出金機能があります(Coinbaseなど)。ユーザー識別のためにプライバシーを毀損するアドレス再利用が前提となりますが、これを使うことは1つの粗野な方法と言えるでしょう。レイヤー2のライトニングネットワークでもウォレットに専用のプロトコルを実装すれば、両者ともオンラインであることを条件に追加操作なしでの定期送金が実現できます。

最近リリースされたc-lightningのOffersや、Bitfury Peachというものが見つかりました。(Offersについては来週の記事で触れようと思います)ただし、ライトニング上のソリューションも特定のウォレットに依存することに加えて両者ともオンラインである必要があるため、使い勝手がいいとは言えません。そもそも定期的に勝手に送金されること自体が少し気持ち悪いと感じる人もいるでしょう。(自分はカードなら気にならないのに、ビットコインだとなんとなく嫌です)

厳密にはサブスクリプションではないですが、個人的にはLSATなどを使って一定期間のアクセス権を販売し、アクセス権が切れたあとの初回利用時に新たに購入してもらう形態が実装しやすくてサブスクリプションに近いかなと思います。ユーザーはどちらかというと節約になる上に、利用しなくなってからずるずる課金し続けることもありません。

そもそもサブスクリプションは必要なのか?

このトピックについて考えるほど、サブスクリプションという一般的な形態に疑問を抱くようになりました。サブスクリプション型のサービスは多数ありますが、ヘビーユーザーが営業コストを上昇させるような業態においては、そのコストをライトユーザーが負担する販売形態です。比率はサービスによって異なるでしょうが、多くの場合で1割未満のヘビーユーザーを9割が支える形になっているのではないでしょうか。つまり9割のユーザーは払いすぎなのです。

ヘビーユーザーがコスト増を招かないビジネス(支出の大部分が固定費)においてはこの問題は小さいですが、コスト増につながる場合に顕在化します。「使えば使うほど得」の逆が「あまり使わなければ損」なのは当たり前ですが、意外と盲点かもしれません…

また、ライトユーザーが解約しやすいとヘビーユーザーの比率が増加し収支が悪化するという理由であえて解約を難しくしている企業の行動も問題になっています。(解約は混雑するコールセンターでのみ受け付けるなど。)つまり、サブスクリプションはビジネスの構造によってはヘビーユーザーに甘くライトユーザーに厳しいという、非常にいびつな課金モデルだという見方ができるのではないでしょうか。もちろん払う金額が決まっていて気楽なことなど、サブスクリプションのメリットも多数あるでしょう。全てのサブスクが廃れるとは思いませんが、前述のとおり勝手に動かされたくないビットコインと相性が悪いのは確かですし、多くのユーザーにとって一番得なモデルでもない場合が多そうです。

ライトニングネットワークと従量課金制

ライトニングネットワークがもたらしたマイクロペイメントの革新性に立ち戻ると、これまで難しかった少額の課金行為が可能になるので、従量課金がしやすくなります。Nayuta Coreが実験的にモバイルゲームであるSarutobiと連携してゲーム内の報酬をユーザーの操作なしで受け取れるようにしているように、ユーザーが1タップかそれ未満の操作で少額の課金やストリーミング課金を行えるようになると従量課金・マイクロペイメントのコストがさらに下がり、従量課金制にとって追い風でしょう。(ストリーミング課金ができるSphinx.chatを使ってポッドキャストを配信している人もいます。)

ただし、将来的にライトニングネットワークが少額課金に向いたものであり続けるかは疑問視する余地があります。なぜなら、結局はレイヤー1での手数料増加がライトニングチャネルの手数料増加につながるからです。そうなった場合はLN上の送金数をまとめるために、少額の送金については大規模なノードを運用するLSP間などで貸し借りの勘定が生まれるかもしれません。
まとめ

少しまとまりのない記事になってしまいましたが、言いたかったことをまとめると:・暗号資産での定期支払い機能は基本的にウォレットによる独自実装・そもそもビットコインと定期支払いは相性が悪いかもしれない・マイクロペイメントが普及すればサブスクリプション→従量課金制へのトレンドが生まれる可能性は十分にありそう