LN→オンチェーンのスワップサービス、なぜ0.5%もかかるのか?
ライトニングネットワーク上にあるビットコインをオンチェーンに出金する方法として最も「王道」なのはチャネルを閉鎖することですが、これが必ずしも主流ではありません。なぜなら、ライトニングノードの複数のチャネルに残高が分散している場合、複数のチャネルを閉鎖しないと必要な残高が用意できない場合もあり、またチャネルを開設したりと手間と費用がかかってしまうためです。
そこで活躍するのがBoltzをはじめとするLN上のsatsをアトミックにオンチェーンに出金させてくれるスワップサービスで、Boltz自体がOSSであることから最近同様のサービスが増えてきています。
ところが、どこも手数料設定が0.5%+ネットワーク手数料という金額で、価格面で競争する様子がありません。ライトニングネットワーク七不思議です。
今日はライトニングとその周辺においてまだ未成熟な手数料関連の部分に着目して、今後どのように効率化されていくかを考えます。
・流動性供給に関係するサービスの手数料設定が固定かつ偏っている
・供給が増えて価格発見が進まないのはなぜ?
・これから優位に立てるプレイヤーは誰か
流動性供給に関係するサービスの手数料設定が固定かつ偏っている
冒頭でも触れたように、ライトニング上で流動性供給を行うサービスの手数料設定には驚くほど多様性がありません。
例えばBoltzやクローンであるSwaps by ZEUS LSP、複数のスワッププロバイダーから選べるSwapMarket、Boltzと全く関係のないFixedFloatなどまでどこを見てもオンチェーンとLNのスワップは0.5%の手数料がかかります。
よくよく考えてみると、価格変動リスクさえ負わない単純なLNとオンチェーンの移動で片道0.5%というのはかなり割高に感じるのではないでしょうか。もちろんリバランスなどLN関連の様々なコストがあったりするにしても粗利率が高そうな印象を受けます。
これだけ儲かりそうな雰囲気が出ていれば、あっという間に供給過剰になって値崩れしそうなものですが、自分の知る限りLN上のサービス提供の手数料相場は低下していません。スワップサービス以外でも、Phoenix Walletはチャネル容量の1%を手数料として要求しますし、実質的にスワップサービスであるMuunもあらゆる手で手数料を徴収しています。
供給が増えて価格発見が進まないのはなぜ?
1つの理由として考えられるのは、インバウンドキャパシティ獲得のコストが0.5%に近づいてしまったことです。
根拠がなさそうなところが類似するものでいえば、BitMEXに代表されるビットコインの無期限先物取引では年間10%程度の「金利」が伝統的にハードコーディングされてきました。ロングしている人が支払い、ショートしている人が受け取る形で、金利のないビットコインの世界における金利に一番近い存在です。ただ、この10%という数字はなにか根拠があるわけではなく、最初にBitMEXがそう設定したから業界標準になったという、いかにもふわっとした存在です。
もし同様に、ライトニング→オンチェーンへのスワップの手数料率0.5%がはじめはフィーリングで設定されたものだったとしても、そのスワップを運営するためのコストが売上に近づくうちに自己成就的にスワップサービスの相場が0.5%に収束してしまった可能性もあるのではないでしょうか?
実はBoltzクローンの中でも特異なものに、閉鎖してしまった日本のDH Swapがありました。ここは実はLN→オンチェーンの手数料が0.3%と業界最安レベルだったり、ほかにもSwap In(オンチェーン→LNへの両替)にマイナス手数料0.2%という形でユーザーにインセンティブを与えるなど工夫されていて面白いものでした。
残念ながら閉鎖されてしまった理由ははっきりしませんが、このあたりの収益性とコストのバランスだったり、費用対効果などの問題、インセンティブ適用の難しさなどがあったのかもしれません。
他にも、仮に0.4%でスワップできるサービスがあったとして、ルーティングノードがみんなそこに向けての手数料を0.1%高くする余地が生まれるだけなのかもしれません。転売ヤーがメーカーの得られたかもしれない利益を掠めるような行動は経済合理性に裏付けられたものだとよくわかります。
このように、0.5%が定番化してしまった以上、そこから手数料を下げる余地が実は小さいのかもしれません。
これから優位に立てるプレイヤーは誰か
では、どのようなプレイヤーであればインバウンドキャパシティを大規模に獲得したり、スワップアウトできる潤沢な残高を確保できるのでしょうか?スワップ業界に流動性供給を叩きつけることができるのは取引所とLNのユーザー増加しかありません。
まず、LNのユーザーが増加して取引所などから引き出さないとスワップサービスをやるためのインバウンドキャパシティの供給がうまくいきません。ネットワーク全体で言っても、おそらくスワップ需要に高く売る流動性を、安売りしているインバウンドキャパシティを買って獲得する競争になってしまっています。根本的な理由はLN→オンチェーンのスワップ需要がオンチェーン→LNのスワップ需要(すなわち、LNでの決済需要)を上回ってしまっていることです。
したがってLN決済の需要を作れるプレイヤーはネットワーク全体の宝であり、そのポジションを活かしてルーティングなどでも有利な立場を築けるかもしれません。LN決済が普及すればインバウンドキャパシティの仕入れコストがデフレし、スワップ手数料も下がるでしょう。
また、取引所は潤沢なオンチェーン資金を持っており、また順調にLN決済が普及していればLN出金需要が大きくインバウンドキャパシティを稼げるため、自然とLN→オンチェーンのスワップにおいても体力のあるプレイヤーになり得ます。
ただ、規制でがんじがらめの取引所はあまり積極的にこういう部分を狙えなさそうなので、どちらかというと動きが早いのはオフショア系の取引所になるでしょうか。(残念ながら日本の取引所は未だにLN対応しているところがありません)
まとめ
・LN→オンチェーンのスワップサービスの手数料が軒並み0.5%なのは、当初は感覚値で設定されたものだったが、今は仕入れコストにも影響しているためよほど強い力が働かない限り動かせない水準になったのかもしれない
・LN決済の普及が進み、LN→オンチェーンのスワップ需要を超えることができれば手数料は下がる可能性がある。そのとき、オフショア取引所が大きなプレイヤーになりうる
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