Wallet Of Satoshiのノンカストディアル版のバックエンドに採用されたSparkですが、他にも導入するウォレットが出てくるなど快進撃が続いています。

Lightsparkが発明した新しいレイヤー2:Spark
ノンカストディアルなライトニングをエンドユーザー向けにスケールさせることの難しさはウォレット事業者が一番痛感しています。これが最近の記事でも取り上げた「Nodeless Lightning(Liquid Networkを使わせるライトニングウォレットのバックエンド実装)」のようなアイデアにつながっています。 セルフカストディ型のライトニングウォレットのスケーラビリティを補完できる技術は出てくるのかライトニングでセルフカストディをしようと思うと、最低でも自分でチャネルを保有する必要があり、よりトラストレス性を高めようと思えば自分のノードを立てることになります。したがって、世の中にあるセルフカストディ型のライトニングウォレットはこのいずれかの形をとっています。 しかし、この使い方にはコストがつきものです。例えばチャネルの開設には今のオンチェーン手数料が低迷している環境でも数十円、場合によっては数千円以上になることも考えられます。ライトニングノードの維持も無料ではありません。(趣味で維持している場合は無料のように考えてしまいますが) ライトニングはカストディ型で普及する、という今では主流の

その中に「Xverse」というウォレットがあり、聞いたことがあるなと思って調べたらOrdinalsをきっかけに一定のユーザーがいるビットコインウォレットでした。

Xverse - The Home of BitcoinFi | Bitcoin Wallet
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Ordinals以外にもサイドチェーンのStacksだったり、イーサリアム上のロールアップであるStarknetにも対応しているなど、従来のビットコイナーとは明らかに違う層をターゲットにしていることが特徴だと感じています。

Ordinals(Inscriptions、BRC-20など)やビットコインL2ブームによってWeb3に端を発する「新種のビットコインエコシステム」が存在感を増しているのかなと感じたので、今日はそれらが従来のビットコインエコシステムとどう違った特徴を持つのか説明していきます。

・ビットコインウォレットのベストプラクティスは放棄している

・WalletConnect、Nostr Wallet Connect、Lightning Node Connectなど似た規格がたくさんあるのは混乱を生むかもしれない

・一過性のものか、多くのユーザーを獲得できるのかは未知数

ビットコインウォレットのベストプラクティスは放棄している

Xverseだけでなく、多くのWeb3ウォレットがビットコインにも対応しています。しかし、根本のアーキテクチャがいわゆるEVMチェーンを想定したものなので、ビットコインウォレットのベストプラクティスには沿っていません。その代表例として、どれもビットコインアドレスの使いまわしを前提としています。

イーサリアムのようなアカウント型のチェーンの場合は原則的に1ユーザー1アドレス(アカウント)という運用になっていますが、これはプライバシー面で非常に大きな問題を抱えています。誰かに送金すると、そのアカウントで今までに行ったすべての活動、触ったり保有したことのあるすべての資産などの情報が簡単に見られてしまいます!

もちろん、ビットコインもブロックチェーン上でトランザクションを辿ったり、様々なヒューリスティクスに基づいた分析を行えばある程度プライバシーは侵害されうるものです。しかし、同じアドレスを使い回さないことによってこのような分析は難しくなり、プライバシー最重視の使い方をすればかなり匿名性は高いです。

💡
取引所の入金アドレスなど、自分のコントロールできない範囲でのアドレス再利用もプライバシーを損ないます。逆に、新しい入金アドレスをいつでも発行できる取引所には一目置いてしまいます!
また、最近ではライトニングもプライバシーの文脈で大きなメリットがあります。

アドレスの使いまわしはビットコインのベストプラクティスから逸脱したあまり良くない例として取り上げましたが、逆にビットコインウォレットの常識に囚われない面白い機能も出てくるかもしれません。

今のところはDefi、NFT、エアドロップなどをウォレット内からすぐに使えるというメリットなのかデメリットなのかわからないのが2つ目の例かなと思います。それらの機能を求めるユーザーにとってはウォレット内で完結する利便性は高いでしょう。

WalletConnect、Nostr Wallet Connect、Lightning Node Connectなど似た規格がたくさんあるのは混乱を生むかもしれない

そもそもなぜXverseをインストールしたかというと、Bitaxeで使ってみたい新しいマイニングプールがXverse必須だったからです。

Parasite Poolはソロマイニングとプールマイニングの中間を埋めるマイニングプールで、「ブロックを見つけたユーザーは1 BTC獲得」「残りは全員でハッシュレートに応じて分配」という絶妙な報酬設計になっています。完全なソロマイニングよりは当たる確率が高いのがポイントだと思います。

Parasite
Parasite bitcoin mining pool

ここは少額の報酬はLN Address宛に払い出すのですが、このLN Addressを発行するのにXverseをユーザーに強制しているわけです。OCEANなどではBOLT12を登録させますが、BOLT12の普及がまだ進んでいないのでLN Addressで代用するのはいいと思います。(必ずしもXverseのLN Addressである必要性はないので、ひょっとすると紹介報酬がもらえるなどビジネス上の都合かもしれませんが)

ただ、「最も接続するのが難しいプール」というコメントをどこかで見たのですが、確かにParasiteに接続するまでにXverseのChrome拡張を入れないといけないという部分はあまり関心できません。スマホアプリ版もありますが、アプリ版からはプールのサイトに連携できないようでした。

XverseはWalletConnectというWeb3業界の標準となっている規格を使ってウェブアプリと連携するという理解なのですが、本来はアプリ版からでもできるはずのことなのでなぜブラウザ拡張限定なのか理解に苦しみます。

また、関連してですが、他にも似たようなことを実現する規格としてNostr Wallet Connect (NWC)やLightning Labs社が推すLightning Node Connectなどがあり、群雄割拠感があります。このあたりに互換性がないことは普及の妨げになりそうな要素です。実際はどれかが優位になるのでしょうが、最善のものが優位になるとも限りません。

一過性のものか、多くのユーザーを獲得できるのかは未知数

さて、従来型のビットコインウォレットというよりはWeb3ウォレットがビットコインに対応したというべき形態のものは果たして多くのユーザーを獲得できるのでしょうか?

これに関しては実は可能性はあるのではないかと思っています。というよりは、ウォレットというもの自体がこういう形になっていくという意見です。

OSSに関心のあるユーザーは少なく、多くのユーザーは信用さえできればクローズドソースのウォレットや、究極的には箱庭でも問題ないと考えるでしょう。そうなったとき、ウォレットのスーパーアプリ化は方向性としては間違っていない気がします。

すると、ウォレットの形は(例えばLN Addressなど)わかりやすい送金先IDがあって、あとはいろんな使い方ができれば多くのユーザーの需要を満たしつつ、ある程度の囲い込みによってビジネス的にも成功しやすいでしょう。

また逆にスーパーアプリがビットコイン対応していくにしても、プライバシー軽視のフィンテック業界からビットコインアドレスを使い回さない、プライバシーに配慮したソリューションが出てくるとはあまり思えません。ユーザーの大半も特に求めていないかもしれないですし。

というわけで、必ずしもXverseやビットコインに対応したWeb3ウォレットが覇権を取るとは限りませんが、世の中で主流になっていくビットコインウォレットは似たような姿をしているような予感がしています。

まとめ

・ビットコインウォレットのベストプラクティスに従わない、Web3サイドからビットコインに対応したようなウォレットがそれなりにユーザーを集めている

・ビジネス的な要請、ユーザーからの需要によって、将来的にビットコインウォレットはそういう形が主流になっていく(なってしまう)可能性は十分高い