ビットコインのFUDまとめ|よくある12の誤解を解消する
ビットコインに対しては、誕生から17年目を迎えた今でも、さまざまな批判や誤解が繰り返されています。
「環境に悪い」「犯罪に使われる」「ねずみ講だ」「いずれゼロになる」こうした言説は、FUD(Fear, Uncertainty, Doubt:恐怖・不確実性・疑念)と呼ばれ、ビットコインの正しい理解を妨げる大きな要因となっています。
本記事では、ビットコインにまつわる代表的なFUDを12個取り上げ、それぞれの実態を整理します。
ビットコインに興味を持ち始めた方や、周囲から否定的な意見を聞いて不安を感じている方にとって、冷静に判断するための材料になれば幸いです。
FUDとは何か
FUDとは、Fear(恐怖)、Uncertainty(不確実性)、Doubt(疑念)の頭文字を取った略語です。
もともとはIT業界で競合製品へのネガティブキャンペーンとして使われていた言葉ですが、ビットコインの文脈では、根拠の薄い批判や誤解に基づく否定的な言説を指します。
FUDの厄介な点は、部分的な事実を全体の評価に拡大してしまう構造にあります。代表的な12個のFUDを一つずつ解説します。
FUD①:ビットコインは環境に悪い
「ビットコインのマイニングは大量の電力を消費しており、環境破壊を引き起こしている」という主張です。おそらく最も頻繁に耳にするFUDの一つかもしれません。
実態:エネルギーの中身と用途まで見る必要がある
マイニングが電力を消費すること自体は事実です。しかし、再生可能エネルギーの利用割合は年々増加しており、一部の調査では50%を超えているとされています。余剰電力やフレアガス(天然ガスの随伴ガス)をマイニングに転用する取り組みも進んでおり、本来は無駄に放出されるエネルギーを有効活用する手段としても注目されています。
従来の金融システム(銀行の支店網やATM網の維持、巨大なデータセンターの運営、さらには紙幣の印刷・輸送など)のエネルギー消費と比較する視点も欠かせません。ビットコイン単体の電力消費だけを切り取るのではなく、既存システム全体との比較という視点も重要です。
マイニングとエネルギーの関係、そしてデータセンターに対する環境負荷の議論については、以下の記事でより詳しく解説しています。
FUD②:ビットコインは犯罪に使われる
「ビットコインは匿名性が高く、マネーロンダリングや犯罪の温床になっている」という批判です。ダークウェブでの利用など、初期のイメージが根強く残っています。
実態:現金よりも追跡しやすい
ビットコインのブロックチェーンはすべての取引履歴が公開されています。「匿名」ではなく「偽名」であり、アドレスと個人の紐付けさえできれば過去のすべての取引を追跡できます。
ブロックチェーン分析企業の技術向上により、法執行機関がビットコインの取引を追跡して犯罪者を逮捕した事例は数多く存在します。暗号資産取引のうち不正利用の割合は全体のごくわずかであり、法定通貨(現金)によるマネーロンダリングの規模と比べると桁違いに小さいとされています。
犯罪資金が追跡されやすい一方で、自己のプライバシーを保護する点も重要です。チェーン分析とプライバシーの関係については、以下の記事も参考になります。
FUD③:ビットコインはハッキングされる
「ビットコインはハッキングされて盗まれる」という不安です。過去の取引所ハッキング事件の報道が大きく影響しています。
実態:ネットワーク自体は一度も改ざんされていない
ここで重要なのは、ハッキングされたのはビットコインのネットワーク(プロトコル)ではなく、取引所やウォレットサービスなどの周辺サービスであるという区別です。
ビットコインのブロックチェーンは2009年の稼働開始以来、一度も改ざんされたことがありません。稼働率は99.99%を超えており、世界で最も堅牢なコンピュータネットワークの一つです。
Mt.Gox事件(2014年)やDMMビットコイン事件(2024年)は取引所のセキュリティの問題であり、銀行が強盗に遭っても日本円の仕組みに問題があるわけではないのと同じです。
自分の資産を守るためには秘密鍵の適切な管理が重要です。シードフレーズの保管方法については以下の記事で解説しています。
FUD④:ビットコインはねずみ講(ポンジスキーム)だ
「ビットコインは後から参加した人のお金で先に参加した人が儲かる仕組みであり、ねずみ講やポンジスキームと同じだ」という批判です。
実態:ポンジスキームの定義に当てはまらない
ポンジスキームとは、新規参加者の出資金を既存参加者への配当に充てる詐欺の手法です。ビットコインには運営主体がなく、誰かが「配当」を約束しているわけでもありません。
すべての取引はブロックチェーン上で透明に記録されており、新規参加者の資金が既存参加者に自動的に分配される仕組みは存在しません。
ビットコインの価格は市場の需給によって決まります。これは株式や金(ゴールド)と同じ市場原理です。
FUD⑤:ビットコインには価値の裏付けがない
「ビットコインには実体がなく、何の裏付けもない。空気のようなものだ」という批判です。物理的に手に取れないことへの不安も背景にあるかもしれません。
実態:数学・エネルギー・分散ネットワークが裏付け
まず、現在の法定通貨も明確な価値の裏付けを持っていません。1971年のニクソン・ショック以降、主要通貨は金本位制から離脱しており、法定通貨の価値は発行国の信用に依存しています。
ビットコインの価値を支えているのは、発行上限2,100万枚という数学的な希少性、マイニングに投入される莫大な計算リソース(エネルギー)、そして世界中に分散した数万のノードによるネットワーク効果です。
FUD⑥:51%攻撃でビットコインは終わる
「ネットワーク全体の計算力の過半数を誰かが掌握すれば、ビットコインは乗っ取られてしまう」という不安です。技術的な知識がある方ほど気になるポイントかもしれません。
実態:コストが天文学的で、成功してもメリットがほぼない
51%攻撃とは、ハッシュレートの過半数を単一の主体が掌握し、不正な取引を承認しようとするものです。理論上は可能ですが、現在のハッシュレートは史上最高水準にあり、これを上回る計算力を用意するコストは天文学的です。
仮に成功したとしても、できるのは自分の取引の二重支出程度であり、他者のビットコインを奪ったり発行上限を変えたりすることはできません。さらに、攻撃が発覚すれば価格が下落し、攻撃者自身の保有資産や設備の価値も棄損します。膨大なコストをかけて攻撃しても経済的に割に合わない構造です。
加えて、ビットコインは参加者の合意によってルールが維持される分散型ネットワークです。仮に不正な変更が試みられた場合でも、コミュニティが受け入れなければチェーンは分岐し、正統なルールを守る側が存続します。
フォークとコンセンサスの仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。
FUD⑦:量子コンピュータでビットコインは破られる
「量子コンピュータが実用化されれば、ビットコインの暗号は簡単に解読されてしまう」という懸念です。量子コンピュータの進歩に関するニュースが出るたびに話題になります。
実態:必要な性能に遠く及ばず、インターネット全体の課題
ビットコインの楕円曲線暗号を破るには数百万量子ビットが必要とされますが、現在の技術水準は数千量子ビット程度です。また、この問題はビットコインに限らず、インターネットバンキングや電子商取引など、あらゆるデジタルセキュリティに共通するものです。
すでにポスト量子暗号の標準化が国際的に進められており、ビットコインにおいても量子耐性の議論が活発に行われています。過去にSegWitやTaprootを導入してきたように、必要に応じたアップグレードが可能です。
量子コンピュータは万能な並列計算ができるという誤解が特に多いです。まずは量子コンピュータがどのようなものなのかについて、概要を知っていただければと思います。
FUD⑧:政府がビットコインを禁止したら終わりだ
「政府がビットコインを違法にすれば使えなくなる」という不安です。中国の全面禁止などが引き合いに出されることが多いです。
実態:分散型ネットワークの完全停止は極めて困難
中国は2021年に暗号資産取引を全面的に違法としましたが、禁止後もVPNやP2P取引を通じた利用は続いています。ビットコインはオープンソースかつ分散型であり、インターネット接続さえあれば世界中どこからでもトランザクションを送信できます。
各国の動向を見ても、米国のビットコインETF承認、EUのMiCA、日本の金融庁による監督体制など、先進国は禁止ではなく規制統合の方向に進んでいます。一つの国が禁止しても、すべての国が足並みを揃えることは現実的ではなく、禁止した国はイノベーションと経済的機会を他国に譲ることになります。
FUD⑨:ビットコインはチューリップバブルだ
「ビットコインはチューリップ・バブルの再来であり、いずれ価値がゼロになる」という主張です。価格上昇、価格下落が起きるたびに繰り返されます。
実態:毎回安値を切り上げて回復しており、典型的なバブルとは異なる
過去に70〜80%の下落を何度も経験していることは事実です。しかし、チューリップや南海泡沫事件といった典型的なバブルは崩壊後に回復しません。ビットコインは毎回のサイクルで底値を切り上げ、新たな高値を更新してきました。
2024年のビットコイン現物ETF承認以降はBlackRockやFidelityといった大手資産運用会社が参入しており、投機的なバブルとは異なるフェーズに入っていると考えられます。
ちなみに、オランダではビットコインマイニングの排熱を利用し、チューリップの栽培が行われています。チューリップバブルと例えられる中、おもしろい取り組みだと思います。
FUD⑩:ビットコインは実際の支払いに使えない
「送金に時間がかかり手数料も高いので、日常の決済手段としては実用性がない」という指摘です。コーヒー一杯を買うのにビットコインは使えない、という話が引き合いに出されます。
実態:Lightning Networkにより少額決済が実用段階に入っている
ベースレイヤー(オンチェーン)だけを見れば一理ありますが、Lightning Network(ライトニングネットワーク)というレイヤー2技術により、ほぼ即時・極めて低い手数料での送金が可能になっています。
実際、決済サービス大手のSquare(Block社)は2025年11月からLightning Networkを活用したビットコイン決済を導入しており、400万以上の加盟店がビットコインを受け付けられる環境が整い始めています。処理手数料は2027年まで無料とされており、クレジットカードよりも低コストな決済手段として店舗側のメリットも大きいです。
スイスでもビットコイン決済に対応した店舗やATMが広がっています。
「使えない」というFUDは、インフラ整備が進む現在ではやや時代遅れと言えるかもしれません。ビットコイン決済は受け入れも支払いも、すべての人々に開かれています。
ビットコインの使い道の具体例については、下記記事で紹介しています。
FUD⑪:ビットコインは一部のクジラに支配されている
「一部の大口保有者(クジラ)がビットコインを大量に持っており、市場を操作できる。結局は不公平な仕組みだ」という批判です。
実態:価格には影響しうるが、ルールを変える力は持たない
ビットコインの保有が偏っている面があるのはデータ上事実です。
ただし、大量に保有していてもビットコインのプロトコル(ルール)を変更する力は持ちません。ルールはノード(ネットワーク参加者)の合意によって維持されます。
大口保有者が市場価格に影響を与えることはあっても、発行上限を変えたり取引を検閲したりすることはできません。株式における大株主が経営に影響を持てる仕組みとは根本的に異なります。
ビットコインの公平性については、以下の記事で別の角度から考察しています。

FUD⑫:ビットコインはいずれもっと優れた暗号資産に置き換わる
「ビットコインは初期の古い技術であり、より高速・高機能な暗号資産が登場すれば役目を終える」という主張です。
実態:ネットワーク効果と分散性において代替困難
貨幣としての信頼性は単なる技術的スペックだけでは測れません。ビットコインが17年以上にわたって蓄積してきたネットワーク効果(ユーザー数、マイナーの計算力、開発者コミュニティ、決済事業者、サービスなどのインフラ)は、後発のプロジェクトが簡単に追い付けるものではありません。
また、ビットコインは「特定のリーダーや運営主体がいない」という点、17年以上という時の試練を耐え抜いてきた点から、他の多くの暗号資産と根本的に異なります。
技術的な改善はLightning Networkのようにレイヤーとして構築できるため、ベースレイヤーの堅牢性と安定性こそがビットコインの強みです。ビットコインのトラストレスな設計思想については以下の記事で掘り下げています。

まとめ:FUDとの向き合い方
12個のFUDを解説しましたが、共通しているのは、部分的な事実を全体の評価に拡大してしまう考え方です。
- 電力を消費する → だから環境に悪い
- 取引所がハッキングされた → だからビットコインは危険
のように、文脈を省略することでネガティブな結論が導かれてしまいます。
FUDが生まれやすい理由の一つに、ビットコインには特定のリーダーや運営主体がいないことが挙げられます。企業であれば反論したり、場合によっては裁判沙汰にもなりますが、ビットコインにはそうした仕組みがありません。
正しい情報を広める役割は、ビットコインを理解している一人ひとりに委ねられています。
本記事が、FUDに惑わされず自分自身で調べ、考えるための出発点になれば幸いです。
次の記事
読者になる
ビットコイン研究所の新着記事をお届けします。

ディスカッション