さて、以前からStablecoinの最近のトレンドや、リスクや問題点などについてコラムにしたこともありましたが、とうとう少しづつ規制強化や禁止などの可能性を本格的に意識する必要が出てきそうです。

最新のステーブルコイン規制提言概要

数日前に、世界の中央銀行やG20に政策提言などを行う、Financial Stability Board(FSB)という組織が、特にStablecoinにフォーカスした新しい提言を公開し、その中でより厳格な規制、場合によってはステーブルコインの「禁止」の必要性を示唆しました。

Central Banks Recommended to Ban Stablecoins
Today, the Financial Stability Board (FSB) released a document addressing the regulatory, supervisory, and oversight challenges raised by global stablecoins. The document, although only consultative in nature, reveals disturbing plans for…

この手の規制強化の提言は以前からあるものでそこまで驚きではないですが、今までと違う点があるとしたら、

  1. StablecoinsにフォーカスしてTetherやDaiなども具体的に意識し、より広範、厳しい規制の提言をしている
  2. 規制に沿えない場合、使用や発行の禁止(Prohibition)の示唆も含む
  3. Public Blockchains上のStablecoin(TetherやUSDC)だけでなく、MakerDAOなどの「DeFi」と呼ばれるStablecoinにも等しく規制の必要性を説いている

今回の提言の狙いとしては、公式的には今までから言われている通り、

  1. 国際金融システムの安定化
  2. 資金洗浄などの違法行為の取り締まり

などが挙げられていますが、本音としては今後中央銀行や政府がStablecoin(デジタル法定通貨)を自ら発行していく為の布石ともみなせると思います。

政府は本当にSTABLECOINやDEFIを規制、禁止できるのか?

ただし、このレポートではStablecoinの禁止が主眼に置かれているわけではありません。なのですぐにTetherやDaiなどが潰されたりするわけではないですが、禁止も辞さない、パブリックチェーン上だろうが、コンソーシアムチェーン上だろうがDeFiだろうがFiatに連動したデジタル通貨には全て等しく規制をかける姿勢を明確に提言したことの含みが大きそうです。
TetherやUSDCなど発行主体が明確に存在する法人などであれば発行の禁止や厳しい規制(KYC/AML、トランザクション監視など)は容易に出来ますが、MakerDAO/DaiなどのいわゆるDeFiと呼ばれる分散化されているとされるStablecoinも果たして政府は本当に規制出来るのでしょうか?

一言で言えば簡単に出来るでしょう。

すでに過去にコラムにもしたり、先日の価格クラッシュとDaiのペッグ崩壊やルール変更で明らかになった通り、MakerDAOは開発会社とVCなどの大量MKR保有者が簡単にルール変更やDaiの清算が出来てしまう状況ですし、その他のDeFiの多くもDaiに依存していたり、開発者が変更権限やKill switchなどを持っているものが多いです。

規制者がそういうDeFi企業や財団にプレッシャーをかければ使用の制限やトークンの清算なども容易に出来るでしょうし、規制者もそれはすでに理解した上で一律の規制を提言しているのでしょう

禁止になったら何がおこるか?

さて、Stablecoinsの一律禁止というのは少し考えづらいですが、もし今の金融並みの遵法を要求され始めたら既存のStablecoinの国際性、送金効率、低いコンプラコストなどのメリットがなくなり、Tetherなども含め存在価値はなくなります。今回のような流れも意識すると、今のStablecoinは(ほぼ)全て遅かれ早かれ淘汰されるでしょう。

考えられる影響としては、

  1. 仮想通貨全体の短中期の流動性の低下

  a.Binanceの流動性の多くはUSDTペア

  b.特にアルトコインの流動性は壊滅的打撃を受ける可能性

  c.ビットコインはFiatゲートウェイが最も整備されているので、アルトと比較すれば影響は小さい

  d.流動性の低下⇒全体的な価格低下

2.DeFiの形骸化

  a.前から言っていることだが、分散化されていないDeFiは規制の締め付けが始まった時点で存在価値を失う

  b.規制強化は今のようなDeFiではなく、より匿名ベース、コントラクトベースのプロジェクトへの移行を促す可能性(Uniswap型)

3.仮想通貨世界の二極化

  a.中央銀行などが発行するデジタル化されたFiat(CBDC)とビットコイン

  b.中間にある中途半端な分散化や中央が存在するコイン、プロジェクトは無意味化

  c.ビットコインに関してもマイニングの規制検討などはされているので、対岸の火事とは言えない

  d.全体として規制が強まると、界隈の開発やイノベーションのスピードは低下していく(金融業界化)

感想

今回のような流れは以前から想定されていたことで特に驚きはない。DeFiは少し前から盛り上がっていたが、DeFiと言いつつも全く分散化されていないものがほとんどで、今存在するサービスは規制強化の結果機能しなくなるだろう。Tetherなどが禁止されるとしたらビットコイン含む取引市場全体に短中期で大きな負の影響を及ぼしそうだが、Binanceなどもすでに各国でのFiat戦略を強化し始めており、長期的にはそこまで市場への影響は心配していない。