LNにおけるInbound Capacityの獲得方法8選
Lightning Network(LN)においてノードを立ち上げてチャネルを開設したものの、送金はできるのに、なぜか受け取れないという経験はありませんか。
その原因のほとんどはInbound Capacity(インバウンドキャパシティ)の不足にあります。Outbound Capacity(送信側)はチャネルを開くだけで自然に得られますが、Inbound Capacity(受信側)は相手に流動性を用意してもらう必要があります。これがLNの運用における最初の壁になりやすいです。
(以後簡略のため「Inbound Capacity」⇒「Inbound」、「Outbound Capacity」⇒「Outbound」と表記します)
本稿では、すでにノードを運用しているまたは、これから本格的に運用を始めようとしているLN運用者向けに書いています。Inboundを獲得するための具体的な方法を8つ実践しやすい順で紹介するので、自分に合ったノード運用の最適な戦略が見つかると思います。
Inbound Capacityとは何か
LNにおけるチャネルは、双方向に資金が流れるパイプの様なものです。このパイプの中で、自分に向かって資金が流れてくる容量(受け取れるキャパシティ)をInbound Capacityと言います。
もう少し具体的に説明するために以下の図をご覧ください。

図の中で上の状態は、AliceがBobにチャネルを開設して100,000sats(Outbound)を預け入れた状態を示しています。この時点で、AliceはBobに最大100,000satsを送ることができます。しかし、BobからAliceへの送金は、Bob側に残高(Inbound)がないと一切できません。つまり、チャネルを開く際は基本的に開く側が資金を用意するため、Outboundしか存在しません。
Inboundの獲得とは、下の状態のようにBob側に残高が移ることを示しており、図では50,000satsを送金することで資金のバランスが移り変わることがわかると思います。
Inbound Capacityが重要視される理由
なぜこのInboundが重要視されているのでしょうか。送金目的のためにLNを運用するのであれば、Outboundが枯渇するたびにチャネルを新たに開設して補充することが可能です。
一方で、Inboundは以下の2つのLN運用者において重要な意味を果たします。
- LN決済を導入している事業者
- ルーティングノードの運用者
LN決済を導入している事業者については、支払いを受け取る際にInboundが枯渇していると決済が失敗してしまうため、常にInboundを補充する必要があります。
また、ルーティングノードの運用者においては、チャネル内のバランスを操作することが手数料収益を最大化する上で重要な事柄となります。
両者に共通して言えることは、Inboundの仕入れの難しさにあります。Outboundは先述した通り、チャネルを開設すれば簡単に得ることができますがInboundは時間やコストをかける必要があるため、枯渇する前に計画的に確保し続けることが求められます。
Inbound Capacityの獲得方法8選
Inboundの獲得方法をノード運用者が実践しやすい順番で8つ紹介していきます。
- Lightningで送金する(ウォレットや取引所)
- チャネルを購入する
- チャネルを開設してもらう・相互に開設し合う
- Submarine Swapを行う
- Circular Rebalance
- PeerSwap
- Dual-Funded channelを作る(CLN)
- Liquidity Ads/Lease(dual funding上)
1. Lightningで送金する(ウォレットや取引所)
一番簡単な方法としては、送金を行うことでInboundを得ることができます。ただし、適当に送金をしたのでは資金が減るだけのためおすすめしません。
そこで、自分のWallet of Satoshiなどのモバイルウォレットや取引所宛てにLightningで送金を行い、オンチェーンで自分のウォレットに送り戻すことでInboundを得る方法があります。
ウォレット宛てに送金する際の注意事項ですが、BreezやMuunといったモバイルウォレットはバックエンドでBoltzを用いているため、実は直接Boltzを実行したほうが効率的であったりします。このBoltzに関しては後ほどSubmarine Swapの章にて説明します。
2. チャネルを購入する
次に紹介する方法は、マーケットプレイスを通じてチャネルを購入またはレンタルするやり方です。対価を支払うことで確実にInboundを確保できる点が最大のメリットでもあります。
代表的なサービスとしては以下の3つが挙げられます。
Amboss SpaceのMagmaは、流動性の売り手と買い手をマッチングするマーケットプレイスです。出品されたチャネルを購入すると売り手ノードから自分のノードに向けてチャネルが開設されます。レンタル期間が設定されている点には注意が必要です。
LNBIGはマーケットプレイス形式ではなく、大規模な流動性を持つLNBIGのノード群から直接チャネルを開設してもらうサービスで、大容量のInboundを一度に確保したい場合に適しています。
Lightning PoolはLightning Labsが開発した流動性マーケットで、チャネルのレンタルをオークション形式で売買することができます。lndとの併用が前提になっているので注意が必要です。
いずれのサービスを利用する場合も、レンタル期間終了後の更新コストや、接続先ノードのUptimeスコアなどを事前に確認しておくことが重要です。
3. チャネルを開設してもらう・相互に開設し合う
最もシンプルなInboundの獲得方法は、相手のノードから自分のノードに向けてチャネルを開設してもらうことです。
ただし、見ず知らずのノード運用者が自発的にチャネルを開設してくれることは稀です。現実的なアプローチとしては、知人や仲間のノード運用者に依頼するか、お互いにチャネルを開き合う相互開設が主な選択肢だと思います。
Lightning Network+のLiquidity Swapを活用して、個人のコネクションに頼らず、見知らぬノード同士で相互開設を行うことも可能です。

3~5つのノードが円環状に接続し、各参加者が1本のチャネルを開設するだけで、全員がInboundとOutboundの両方を得られる仕組みになっています。
このLiquidity Swapは後ほど紹介するCircular Rebalanceの簡易版で、オンチェーン手数料のみでInboundを得られるので、今回全ての方法の中で一番コストパフォーマンスに優れていると考えられます。

4. Submarine Swapを行う
Outboundが余っているチャネルが存在する場合は、Submarine Swap(具体的にはReverse Submarine Swap)を実行することが有効です。Lightning上の資金をオンチェーンBTCとして引き出して、その分のInboundを獲得することができます。
代表的なサービスとしては、BoltzとLoopが挙げられます。
Boltzは非カストディアルなビットコインブリッジで、Lightning・Liquid・オンチェーンBTC間のスワップに対応しています。一般ユーザー向けのシンプルなUIを持つBoltzに加え、Boltzの流動性補助をすることでsatsを稼げる報酬型サービスであるBoltz Proも提供されています。自動スワップ(Auto Swap)機能を用いてInboundを自動的に維持することも可能です。
LoopはLightning Labsが開発したSubmarine Swapサービスです。Loop Outを実行することによりLightningからオンチェーンへ資金を送り出す操作で、チャネルのInboundを獲得することができます。
5. Circular Rebalance
Circular Rebalanceとは、自分のノードから自分自身に向けて支払いを送ることで、チャネル間の流動性バランスを調整する手法です。既存のチャネルバランスの中で調整したい場合に有効です。

図を例に説明します。左図は自ノードとチャネルAの間がOutboundに偏っており、自ノードとチャネルDにはInboundに偏っている状態です。
Circular Rebalanceを実行することにより、自ノードはチャネルAから送金を行い、チャネルB→チャネルC→チャネルDという経路を経由して、自ノードが再び受け取ります。
この自分から自分への円環状の支払いによって、右図のようにチャネルAのOutboundがInboundへと変換され、各チャネルのバランスが均等に近づきます。
実行ツールとして代表的なものはBalance of Satoshis(BoS)とrebalance-lndの2つです。
Balance of Satoshis(BoS)はlnd向けの多機能CLIツールで、bos rebalanceコマンドによるCircular Rebalanceを行うことができます。
rebalance-lndはPython製リバランススクリプトで、チャネルの流動性状況を一覧表示しながらCircular Rebalanceを実行することができます。Economy Fee Modeの機能によりリバランスの直接コストと、リバランス後にそのチャネルでルーティングした場合の期待収益を比較し、採算が合わないリバランスを自動的にスキップしてくれる機能を備えています。
6. PeerSwap
PeerSwapは、チャネルを貼っている直接のノード(ピア)との間でAtomic Swapを行い、チャネルのバランスを調整するP2Pプロトコルです。BoltzやLoopのような第三者サービスを経由しないため、手数料の取り分が発生せず、低コストにチャネルリバランスを行うことができます。
使い方としては、まずスワップを行いたい相手ノードと互いにリストに登録し合う必要があります。その後、CLIコマンド一つでスワップを開始でき、あとはPeerSwapのデーモンが自動的に処理を進めてくれます。操作自体はシンプルですが、相手ノードも同じくPeerSwapを導入・設定していることが前提となるため、利用できる相手はある程度限られます。
以下の記事が参考になりますので、PeerSwapに興味がある方はご確認ください。

PeerSwapをより使いこなすには、Liquid Network上のL-BTCを使ったスワップを用いると良いです。L-BTCを使うことでメインチェーンに触れることなくスワップが完結します。速度面でも優れており、L-BTCを使った場合、Liquidネットワーク上で2ブロックの承認を待つだけでスワップが完了します。
PeerSwapはElementsProjectによって開発されているソフトウェアであり、Umbrel等のノードOSからもインストールが可能になっています。
7. Dual-Funded Channelを作る
通常のLightningチャネルの開設では、開設する側が資金を全部出してFunding Transactionを作成するため、開設した側にはOutboundしかない状態になってしまいます。
Dual-Funded Channelはこの問題を根本から解決するアプローチです。
その名の通り、チャネルを開設する際に双方のノードが資金を持ち寄り、1つのFunding Transactionを共同で作成をします。これによって、チャネル開設直後から双方向の残高が生まれ、InboundとOutboundの両方を獲得することができます。
しかし、注意が必要な点として双方が資金を持ち寄るため、互いの開設内容に合意したうえで協力して行わなければなりません。
8. Liquidity Ads/Leaseを利用する(Dual-Funding上)
前項で説明したDual-Funded Channelを基盤に構築された機能がLiquidity Adsです。これは、流動性を提供したいノードがLightningのゴシップネットワークに広告を打つことができ、Inboundを売買できる分散型の流動性マーケットとして機能します。
流動性を購入したいノードは、広告を出しているノードにDual-Funded Channelを開設するだけで、リース契約を行うことができます。広告に含まれる情報には、リース手数料・リース期間・ルーティング手数料の上限などが含まれます。

まとめ
Inboundの獲得には、目的やコスト感に応じたさまざまなアプローチがあります。 まず手軽に始めるなら、ウォレットや取引所への送金、またはLN+のLiquidity Swapが取っ掛かりやすいと思います。特にLiquidity Swapはオンチェーン手数料のみで済み、全手法の中で最もコストパフォーマンスに優れています。
確実にInboundを確保したい場合は、MagmaやPoolのようなマーケットプレイスを通じたチャネル購入が有効です。ただし、レンタル期間や更新コストは事前に把握しておく必要があります。
既存チャネルのバランス改善が目的であれば、Submarine Swap・Circular Rebalance・PeerSwapの中から状況に応じて選ぶのが現実的です。なかでもPeerSwapはサードパーティ不要で低コスト、L-BTC利用時はLiquidネットワーク上で2ブロックで完結するため、継続的なリバランス運用に向いています。
チャネル開設の段階からInboundを確保したい場合は、Dual-Funded ChannelとLiquidity Adsが根本的な解決策です。ただし現時点ではCLN・Eclair・LDKのみ対応で、LNDユーザーは利用できない点を念頭に置いてください。
どの手法も一長一短があるため、ノードの運用スタイルや予算に合わせて複数の手法を組み合わせながら、継続的にInboundを管理していくことが重要です。
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