本記事では、アフリカにおいてウォレットサービスを展開している「Machankura(マチャンクラ)」について解説します。

Machankuraは、アフリカの人々が直面する特有の課題に着目し、インターネット接続がない環境でも、いわゆるガラケーのような低機能な携帯端末を用いてビットコインの送受信を可能にするサービスです。

ビットコインが掲げる「自由な決済」と「自己主権」の実現に向けた、実践的かつ理想的なユースケースの一つとして、筆者は注目しています。

本記事では、Machankuraの目的や背景に加え、その技術的な仕組み、さらに低機能端末におけるセルフカストディ実現に向けた取り組みについて紹介します。

Machankuraとは?サービス概要と利用状況

Machankuraは、いわゆるガラケーのような低機能なモバイル端末(いわゆるガラケー、フィーチャーフォン)でビットコインの送受金が可能なサービスです[1]。南アフリカ出身で元AmazonエンジニアのKgothatso Ngako(コゴタツォ・ンガコ)氏が創業しました。

Machankura

スマートフォンどころかネットのインフラが整備されていないアフリカにおいて、電話通信のプロトコルを用いてビットコインの支払いを実現するサービスとして注目されています。

2026年1月時点ではアフリカ約10か国(コートジボワール、ガーナ、ケニア、マラウイ、ナミビア、ナイジェリア、南アフリカ、タンザニア、ウガンダ、ザンビア)でサービスを提供しています。2022年を開始し、2023年3月時点で約2,900台、2024年5月時点で約15,000台、2026年3月時点で約40,000台の端末で利用されています。

現在はカストディ型のウォレットサービスですが、将来的にノンカストディアル型への移行が検討されています。(実現方法に関しては後述します)

Machankuraの使用例(1)

Machankuraの使用例(2)

Machankuraの使い方

Machankuraの利用には、先頭に「*」、末尾に「#」が付いたUSSDコードを使用します。ユーザーは、各国ごとに割り当てられた番号にダイヤルすることでサービスにアクセスします。(注意:日本から利用することはできません。)

例えば、ガーナなら「*920*8333#」、ケニアなら「*483*8333#」です。これらのコードを入力して発信すると、以下のような操作メニュー(USSD画面)が表示されます。

[MachakuraのUI - 出典: Machankura公式HP

操作メニューには「1: Send bitcoin」「2: Receive bitcoin」のような操作オプションが表示されています。

操作オプション1の「Send bitcoin」を押すと、次に送金の宛先入力方法の選択肢として「電話番号」、「Lightning Address」、「アカウント名」を指定することで、送金相手を指定できます。宛先の入力が終わると、あとは金額を指定し、決済を確定させるだけです。送金にはLightning Networkが使用されます。

電話番号やアカウント名を指定した送金には送金相手もMachankuraアカウントを持っている必要がありますが、Lightning Address入力による送金では、Machankura以外のLightning Addressに対応したWalletへの送金も可能です。

Lightning Addressについては以前こちらで解説しています。

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BTCを受け取る場合も、各ユーザーには「電話番号 or アカウント名@8333.mobi」の形式のLightning Addressが割り当てられています。このLightning Address宛てに支払いが行われれば、Machankuraユーザー以外からでもBTCを受け取ることが可能です。

また、ビットコイン決済対応のギフトカード購入プラットフォームであるBitrefillやAztecoと連携しており、Machankuraで通話プリペイド、電気代、食料品の支払いやギフトカードの購入が可能です。

使用方法については以下の動画でも紹介されています。

アフリカが抱える課題とMachankuraのアプローチ

アフリカにおけるインターネットの普及率の伸びは予想よりはるかに遅く、2025年の調査ではアフリカ全体におけるインターネット普及率は約36%にとどまっています[2]。アラブ地域やエジプト・モロッコを含むアフリカ北部ではインターネット普及率が70%前後と高いものの、アフリカ南部・中部・東部においては約25〜40%と低水準を維持しています[3]。また、インターネット環境が整備されている国においても、非常に高額なため、実際の加入者や利用者はさらに少ないと推測されます。

一方でSIM接続は普及しており、サハラ以南のアフリカにおいても人口の75%相当に達しています[4]。2030年までにアフリカのほぼ全ての人がSIM接続可能な携帯電話を所持すると予測されています。

また、アフリカ全体では携帯電話を使って送金や決済を行うモバイルマネーが普及し、日常的に利用されています[5]。

南アフリカ出身のンガコ氏は、ビットコイン決済がスマホ前提であり多くの人が排除されているという問題意識を持っていました。そこで、モバイルマネー決済などを通じて現地の人々になじみ深いUSSDという通信プロトコルを用いたビットコイン決済に着目しました。

Machankuraの仕組み: USSDを通じたビットコイン送金

Machankuraの仕組みを理解するには、USSDについて理解する必要があります。簡単に説明するとSMSの対話型通信をイメージしていただくとわかりやすいかと思います。

USSDとは?

USSD(Unstructured Supplementary Service Data)とは、いわゆるガラケーのような低機能なモバイル端末でコンピュータと通信が可能な通信プロトコルです。SMSメッセージと似た仕組みであり、通信セッションを確立したまま双方向のやり取りが可能です[6, 7]。

過去には、FacebookやTwitterなどのSNSの更新をUSSD経由で、つまり端末からのインターネット接続なしで行う機能も提供されていました。

USSDを使ったインターネット上のサービスの利用には、USSDゲートウェイと呼ばれる事業者を介する必要があります。一般的には携帯キャリアがUSSDゲートウェイに当たります。

モバイル端末で入力された内容をUSSDゲートウェイが受け取り、リクエストをHTTP形式に変換してWebサービスの提供者に送ります。レスポンスも同様に、HTTP経由で受け取り、USSDゲートウェイ事業者が、携帯端末用の画面データに変換して中継することで、ユーザーの携帯端末には、シンプルなテキストベースのUIが表示されます。

このように、USSDプロトコルとUSSDゲートウェイによって、携帯回線とインターネットの橋渡しが行われます。

日本では電話回線が整備された場所では大抵インターネット回線があるため、USSDを使う需要が少なく、USSDゲートウェイになるのは難しいです。一方でインターネット環境が整備されていないアフリカではUSSDは生活インフラになりえ、比較的簡単に事業者になることができます。

MachankuraにおけるUSSDの使い方

アフリカ各国の携帯キャリアがUSSDゲートウェイに当たります。上述したUSSDコードに対してユーザーが発信すると、そのコードを元にUSSDゲートウェイがMachankuraのサーバーとのセッションを確立します。セッション中のユーザーによる端末操作内容は、USSDゲートウェイを経由し、HTTPリクエストとしてMachankuraのサーバーへと送られます。Machankuraのサーバーは、ユーザーのリクエスト内容に応じて情報を返したり、送金を実行したりします。

ビットコイン送金においては、MachankuraがBitcoin/LNノードを運用しており、そのノードを介することでLNによる送金が実行されます。つまり、現在はユーザーごとの秘密鍵管理や決済におけるチャネル管理・流動性管理はMachankuraに完全に依存したカストディアルなサービスになっています。

しかし、ンカゴ氏はカストディアル型の運用についても問題意識を抱いており、次のビジョンを描いています。

Machankura 2.0: セルフカストディの実現へ

アフリカ諸国では不安定かつ強い権力を持つ政府が暗号資産のカストディサービスを提供する企業に対して何らかの圧力をかける可能性があります。

例えば、2024年にナイジェリアでは現地通貨であるナイジェリア・ナイラの急落が発生し、政府は暗号資産がその原因とこじつけました。政府は通信事業者に対するバイナンスへのアクセス遮断、幹部を拘束・人質にユーザーデータ提出要求や巨額請求を行いました。

アフリカにおいて、カストディ型の暗号資産サービスを運営することはサービス運営者だけでなく、資産を預けるユーザーにまで国家主導の圧力が及ぶおそれがあります。

そこでMachankuraは低機能な携帯端末でもセルフカストディを実現する「Bitcoin Java Cardプロジェクト」に取り組んでいます[8]

「Bitcoin Java Cardプロジェクト」とは?

Java Cardとは、SIMカードなどの小さなチップ上で動くJava環境です。また、SIMカードはセキュアエレメントとしての機能を持っているため、秘密鍵管理に適しています。これらの特性を活かし、秘密鍵はSIMカード内で保管し、チップ上に署名機能などをプログラムすることで、セルフカストディ型のウォレットとして機能することが可能です。

Java Cardで動くJavaアプリには制約も多いため、現在も継続して技術的なチャレンジに取り組んでいるようです。

まとめ: インフラ制約下で進化するビットコイン

Machankuraはインターネットが普及していないアフリカにおいて、携帯電話通信プロトコルUSSDを活用し、ビットコイン決済を実現するウォレットサービスです。環境による制約に屈せず、USSDやJava Cardなどのプロトコル、機能を活用し、技術の力で問題にアプローチを続けています。

個人的には「AIの通貨としてのビットコイン」のような一過性のバズワードよりも、「人を自由にするツールとしてのビットコイン」というビットコインの本質的な使い方を支えるサービスとして期待しています。

Machankuraの今後のアップデートに期待し、今後も動向を追っていきたいと思います。

参考文献

[1] “Machankura” 8333.mobi. Available: https://8333.mobi/

[2] “Facts and Figures 2025: Internet Use,” International Telecommunication Union (ITU). Available: https://www.itu.int/itu-d/reports/statistics/2025/10/15/ff25-internet-use

[3] “In Africa only 37 per cent of the population has access to the internet,” Afrinz. Available: https://afrinz.ru/en/2025/04/undp-in-africa-only-37-per-cent-of-the-population-has-access-to-the-internet/

[4] “Mobile Phone Penetration in Africa,” GeoPoll. Available: https://www.geopoll.com/blog/mobile-phone-penetration-africa/

[5] “Mobile Money’s Impact on Economic Growth in Five African Markets,” GSMA. Available: https://www.gsma.com/solutions-and-impact/connectivity-for-good/mobile-for-development/blog/mobile-moneys-impact-on-economic-growth-in-five-african-markets/

[6] “USSD — Architecture Analysis, Security Threats, Issues and Enhancements,” IEEE Xplore. Available: https://ieeexplore.ieee.org/document/8286115/authors

[7] “How USSD Works,” Django USSD Airflow Documentation. Available: https://django-ussd-airflow.readthedocs.io/en/latest/how_ussd_works.html#why-ussd-airflow

[8] “Machankura Overview,” Binance Square. Available: https://www.binance.com/en/square/post/5570861376186