BluewalletがLndHubを利用したカストディアルなライトニングウォレットの提供終了を発表しました。4月30日までに出金するようにとのことです。(ただしアプリ内のオンチェーンのウォレットや、自身のノードに接続して利用する分には影響なく、継続して利用できるそうです)

Sunsetting Lndhub.io
Today, we are announcing that the Lightning node, Lndhub.io, where BlueWallet provides Lightning wallets to its users, is sunsetting. While you can still withdraw your sats, creating new or refilling existing Lightning wallets on LndHub node will no longer be possible.

1月にサービス終了したテレグラム上のライトニングウォレット:Lntxbotに続き、LndHub系のカストディアルライトニングウォレットが閉鎖されるのは今年に入って2回目です。どちらも2019年頃からライトニングユーザーのオンボーディングに非常に貢献してきたウォレットなので感慨深いですね。

カストディアルLNウォレット自体はまだいくつかありますが、残る大手はWallet of Satoshi一強でしょうか。そちらは最近Nostrのライトニング統合に利用されることが多く、送金数が急増していることから動作が不安定になっていると聞きます。Hosted ChannelsベースのOBW, SBWは健在ですが宣伝を一切していないので人気がありません。(自分は好きです。)
fiatjafが所属するZebedee社のZBDウォレットもカストディアルの領域で頑張っています。

オンチェーンで決済しないLNチャネル:Hosted Channels
豊かな知識とともに。
LNでマイクロレンディング
豊かな知識とともに。

初心者にライトニングを体験させるのに非常に便利なカストディアルウォレットですが、これに対する世の中の流れは厳しいです。実際に最近新しく出てくるライトニングウォレットの大多数は一応セルフカストディに分類されるがLSPに依存した形態をとるか、あるいは完全にユーザーがノードを動かす前提をとります。

果たしてカストディアルなウォレットはこのまま下火になり、LSP型、セルフカストディ型のウォレットが主流になっていくのでしょうか。

LSP型の発展とスケーラビリティの課題

カストディアルウォレットに対する規制面での圧力とそれに対応するコストはご想像の通りかと思います。その一方でLSP型のカストディにはギリギリあたらないラインのLNウォレットはここ数年で様々なタイプが誕生しており、運営方法・利用方法ともに多様化しています。

一番昔からあるのはスマートフォンでLndを動作させ、ウォレット運営企業(LSP)とのみチャネルを開設させるタイプのものです。老舗のBreezなどがこれに当たり、定期的に起動しなければLSPに資金を盗難されていないかわかりません。また、起動時にライトニングのチャネルグラフやブロックチェーンの同期を行うため、すぐに使えない・通信量や電池を消耗させるといった問題点があります。

そこで、Breezはアーキテクチャを改めてユーザーのライトニングノードをBlockstream Greenlightを使ってサーバー上に立て、鍵やバックアップのみをモバイルアプリで管理する形を目指すようです。GreenlightについてはVLSの記事で触れていますが、ポイントとなるのはノードのインフラをLSPが、鍵をユーザーが管理するという分担にすることでエンドユーザーにノード管理のストレスを与えないことです。

VLSはライトニングノードの安全性と拡張性を高める重要な部品となるか
ライトニングノードを維持するにあたって基本的な関心事は故障やバグの可能性と、盗難を防ぐセキュリティの2つです。最近はチャネル情報のクラウドへのバックアップ等で故障リスクに対処するアプローチがありますが、後者はまだ必要な知識を身に付けてノードを適切に守る以外の対策はありません。これはライトニングノードがホットウォレットであることに起因します。 一般的には仮想通貨の保管においてホットウォレットを避け、インターネットから隔離された場所に秘密鍵を保管するコールドウォレットの利用がベストプラクティスであることは皆様もご存知のとおりです。その際に秘密鍵だけでなく署名デバイスごとオフラインに置く一例がハー…

従来のBreezのアプローチを改善する発想のウォレットもあります。Muunや新しくなったNayuta WalletなどはLSPがチャネルを開設してくれるタイプでありながら、ゼロ承認取引の活用やブロックチェーン・チャネルグラフの同期方法などを工夫して(LSPへの依存度を上げながらも)ユーザー体験の改善を行っています。

しかし、これらのウォレットに共通する弱点として、ライトニングチャネルを開設している以上スケーラビリティ面で限界があります。オンチェーン手数料率が1sat/vbyteと格安だった頃はまだしも、Ordinal Inscriptionsの流行でオンチェーン手数料が昔ほど安くない今、1つのノードを多数のユーザーが共有するカストディアルなウォレットには敵いません。

LSP型が主流になると予想

カストディアルウォレットのメリットは簡単さと安定性からくるユーザー体験の良さでしょう。逆に自身でノードを立てるのは面倒くさい上に必要な知識も多く、チャネルバランスの管理やソフトウェアのアップデートなど多少のメンテナンスも必要になります。

LSP型の発展が進む目標としてユーザー体験の向上が中心であるならば、ノードの都合によるBad UXをなるべくLSP側に移してユーザーから隠すという流れは継続するでしょう。最終的な形は「鍵だけユーザーにあるけどインフラはほぼ完全にLSP依存」というものかもしれませんし、それが果たしてノンカストディアルを標榜して良いのかという疑問は少しありますが、それで規制対応コストを回避できるなら各社競って目指すでしょう。

またライトニングチャネルの開設や閉鎖自体を回避するために、すべてオフチェーンでトランザクションを持ち合うことで手数料を削減するスキームなんかもあり得るかもしれません。先週の記事に書いたSwap-in Potentiamや、以前紹介したDLCチャネルに似た発想です。

Swap-in Potentiamでライトニングとオンチェーンの切り替えを意識させないUXを作る
ライトニングウォレットにとって大きな課題の1つに「ユーザーにオンチェーンとライトニングの違いを意識させないこと」があります。普及が進むライトニングですが、未だ多くの場合ビットコイン支払いはオンチェーンで要求されます。ユーザーを混乱させないUXの開発を各社こぞって試みていますが、特にトラストレスな仕組みにこだわる場合はライトニングチャネルの開閉にオンチェーントランザクションが必要という原理的な垣根は大きいです。 著名な匿名ライトニング開発者であるZmnSCPxj氏が年初にメーリングリストに投稿していたSwap-in Potentiamというコンセプトは、まさにウォレットにとって難題であり続ける…
ライトニングチャネル内で初のDLC取引が成功
11月下旬にCrypto GarageがBitcoinメインネット上のライトニングチャネル内でDLCによる差金決済取引を初めて成功させました。これまでDLCはオンチェーンでDLCチャネルのようなものを開設するものでしたが、これからはライトニングチャネル内のオフチェーンで繰り返し取引できるようになっていくかもしれません。 今回はその仕組みについて説明します。 DLC (Discreet Log Contracts)とは DLCとは第三者のオラクルが発表する結果について、取引当事者間でその結果に応じて公開される鍵によって資金を配分するトランザクションを持ち合うことでトラストレス・ノンカスト…

そもそもカストディアルウォレットで良いという需要に対してトラスト削減にかけるコストは小さいほど良いので底辺への競争という感じになる可能性もありますが、これからもLSP側でコストを削減しユーザーに複雑な仕組みを意識させない創意工夫がされ、カストディアル型のウォレットからシェアを奪っていくと予想します。