5,900万人が使うCash Appのライトニング対応とは?日本の事業者が導入すべき理由
米Block社が運営する送金アプリ「Cash App」はLightning Network(以下、ライトニング)での支払いに対応しています。特筆すべき点として、単にライトニングの送受金ができるだけではなく、米ドル残高を使用してライトニング決済が可能です。
Block社のCEOはTwitter(現X)の共同創業者として知られるジャック・ドーシー(Jack Dorsey)氏であり、以前からビットコインの熱烈な支持者として知られています。そのため、時価総額が約6兆円規模の大企業Block社のサービスであっても、ビットコイン関連の仕組みが搭載されるのは自然な流れであると考えられます。
とはいえ、ビットコインへの思想共感のみで社内や株主の合意形成を進めるのは難しいと考えられます。筆者は、Cash Appでライトニングに対応することは事業として合理的な理由があると考えています。
本稿ではCash Appがライトニング対応した理由について仮説ベースで整理します。そのうえで、通常は日本での決済に使用できないCash Appが、ライトニング対応することで日本の事業者もCash Appから支払いを受けられる点について解説します。
Cash Appとはどのようなサービスか

Cash Appは、スマートフォンで個人間の送金ができるアプリです。日本でいえばPayPayが近いサービスだと思います。友人との割り勘や家賃の支払いなど、アメリカでは日常の送金手段として広く使われています。
Cash Appの規模は大きく、月間アクティブユーザーは約5,900万人います(2026年6月時点データ)。アメリカの人口は約3.4億人なので、およそ6分の1にあたります。米国外の利用者も含むため「6人に1人」とは言い切れませんが、アメリカで広く使われている送金アプリです。
Cash Appは送金だけのアプリではありません。専用のデビットカード「Cash App Card」で、店頭やネット通販の支払いができます。その他にも、給与の受け取り口座、株式の売買、2018年からはビットコインの売買もできます。お金の出入りを一つのアプリにまとめる形でサービスが拡充されています。
Cash Appのライトニングへの対応
Cash Appのライトニング対応は、ビットコインを買える、持てるというサービスの延長にあります。2022年1月に「送る」、同年10月に「受け取る」に対応しました。いずれもニューヨーク州を除く米国の利用者向けです。

2025年11月からは、米ドル残高のままでもライトニング決済のQRコードを読み込めば、店舗にはビットコインで届く機能が使えるようになりました。仕組みとしてはCash Appの裏側で米ドルとビットコインが交換され、店舗にはライトニングのビットコインが届きます。つまり、Cash Appの利用者は一度もビットコインを保有せずとも、米ドル残高さえあればライトニング決済が可能です。
Cash Appの月間アクティブユーザーの約5,900万人にライトニング決済の機能が解放されているとも捉えることができます。
ビットコインとライトニングの関係性を知りたい方は以下の記事をご参照ください。
Cash Appがライトニングに対応する合理的な2つの理由
Cash Appではビットコインを持った上でのライトニング決済はもちろん、米ドル残高を使用したライトニング決済も可能です。Cash Appというサービスにおいてライトニング対応がどのような意義があるのか、2つの理由が考えられます。
1. ライトニングなら、ライセンスを取らずに国境を越えられる
送金アプリは規制対応の難易度が高いです。アメリカだけでなく国ごとに送金や資金移動のライセンスが必要となり、取得にも維持にも時間と費用がかかります。
例えばPayPalは各国でラインセンス取得をして広げる方法を取りました。時間も費用も継続コストもかかりますが、同様な事業の参入障壁にもなります。
ライトニング決済に対応すれば、Cash Appの利用者は世界中のライトニング決済対応の店やサービスで支払えるようになります。国ごとのライセンス取得で時間をかけずとも、既存のライトニング決済対応店舗へのアクセスを増やせます。
また、各国の銀行や為替周りの煩わしさ、法律や規制変動の追加対応など、将来的なコストやリスクを削減することもできます。コスト削減ができれば、Cash Appそのもののサービス改善にリソースを投入することができます。
2. 加盟店を開拓しなくても、使い道が自然に増える
一般的に店舗やサービスが決済アプリに対応するには加盟店として契約したり、銀行口座の連携をする必要があります。決済の仕組みが閉じられているため、アカウントなどを店舗ごとに用意する必要があるためです。
一方で、ライトニングはオープンソースの仕組みです。店やサービスがライトニング対応すれば、ある意味Cash Appからの決済に対応しているとも言えます。
ライトニングに対応する店舗が増えるほど、Cash Appで買えるものが増え、Cash Appの利用も増えます。利用できるユースケースが増えれば利用者も増え、対応したい店舗も増えていきます。Cash Appとしては契約している加盟店数は増えませんが、より本質的な流通額や決済可能な店舗数が自然と増加しやすくなります。
また、アメリカは世界最大級の消費大国であるため、Cash Appで買える場所やサービスを米国はもちろん各国で増やすということは理にかなっています。
もちろんジャック・ドーシー氏のビットコインの思想共感もあるとは思いますが、ライトニング決済に対応することは事業判断として成り立ちます。
ライトニング対応で日本でもCash App対応できる
日本の事業者にとって、Cash Appの米ドル決済に対応するのは現実的ではありません。そもそも日本ではサービスが提供されておらず、銀行口座としても米ドルで受け取ることは困難です。
一方で、日本の事業者がライトニング決済に対応しさえすれば、Cash Appユーザーからの決済を受け付けることが可能となります。

上記でも触れましたが、Cash Appではビットコインの残高を用いたライトニング決済はもちろん、米ドル残高を用いたライトニング決済もできます。Cash Appの裏側で米ドルがビットコインに変換され、利用者は米ドルを使用している体験でありながら、店舗側はビットコインを受け取る形となります。
重要な点として購入者が「ビットコイン保有者」や「ビットコイン支持者」などである必要がないということです。ビットコインについて何も知らないCash App利用者であっても、ライトニング決済のQRコードを示せば追加の作業なく決済することができます。もちろん、店舗側はライトニングにより即時入金です。
日本でのCash App対応事例
滋賀県のゲストハウスではライトニング決済とCash Appに対応している旨のポスターが導入されています。宿泊客の1割がアメリカ人ということで「Cash Appに対応している」ということを示すことで利用が促される可能性があります。
【インバウンド向け決済の新手法】
— 丸の肉OL@5/30,31 JRRF2026 G-211 (@icchinakka) July 1, 2026
滋賀の友人が経営しているゲストハウスで、ハウス内での飲食物の購入にCashApp @CashApp → Bitcoinでの支払いスキームを推奨するポスターを実験的に導入してもらいました⚡️
外国人の宿泊客の1割はアメリカ人とのことで、実際に使われる日も近そう! pic.twitter.com/zWGhfWYCOx
海外から日本への旅行者において、為替手数料や決済方法の不安がペインポイントとなります。普段から馴染みのあるCash Appで決済できれば決済時の安心感に繋がります。
そのため、Cash Appユーザーにも利用してもらいたい場合は「ライトニング対応」だけではなく「Cash App対応」という情報を添えることでスムーズにやり取りしやすくなります。
Cash App(ライトニング)対応に向いている日本のサービス
日本の事業者はモノやサービスを作る生産者側にあり、観光地としてもインバウンド消費が活発です。
特に向いているのは滋賀県のゲストハウスのように、アメリカ人による購入需要がすでにあるモノやサービスです。特に、都内で展開されているフリーマーケットや飲食店、大阪や京都など外国人訪問者数が多い店舗でのオフライン決済でCash Appに対応する意義が大きいと考えられます。
日本でもライトニング決済に対応する飲食店は徐々に増加しつつあります。ライトニング決済に対応しているということは、Cash Appからの支払いにも対応できています。
西麻布の高級焼肉「誇味山(こみやま)」ではライトニング決済、オンチェーン決済に対応しています。
1955年から続く人形町駅の「ラムラムラム」では2026年9月にライトニング決済に対応しました。
めちゃくちゃ良い老舗の飲食店さんが本日ビットコイン決済対応しました⚡️⚡️
— 丸の肉OL@5/30,31 JRRF2026 G-211 (@icchinakka) September 24, 2026
ここはオシャレで美味いし、もう普通にここは行くしかないです
ビットコイン決済広がってるな(地道に) pic.twitter.com/AAlHRDUjOO
都内に数十台展開しているキッチンカー「ココロータス」でもライトニング決済が受け付けられています。
その他にも紹介しきれていないライトニング決済に対応した国内店舗、サービスが多々あり、実質的にCash Appからの決済も受け付けられます。もちろん、Cash Appユーザー以外にも各国のライトニングユーザーからの決済も受け付けられるようになります。
また、アメリカ人からの購入需要があればオフラインに限らずオンライン決済でも有効です。越境EC、アニメやゲームなどのデジタルコンテンツ、トレカ、海外向けのサービスなども考えられます。
日本の事業者としてのメリットは、ライトニング決済に対応するだけで米国人からの決済対応ができるようになるということです。ライトニング決済に対応しても、ビットコインの保有者にしかアクセスできず、さらにビットコイン保有者も多数派ではないと考えられます。しかしながら、月間アクティブユーザー約5,900万人のCash Appユーザーという新たな客層からの決済受付が可能となります。
近年、決済事業者による表現規制も強まりつつあります。新規顧客層を取り入れつつ、自由でオープンなライトニング決済を決済方法として追加することは、長期的な事業を継続する上でも重要な選択肢であると考えます。

ライトニング対応はCash Appだけの話ではない

ライトニング決済に対応するという動きはCash App以外にも広がるかもしれません。
Strikeのようなウォレットサービスや、ジブラルタルで銀行ライセンスを持つXapo Bankなどは、すでにライトニングを活用した送金・決済機能を提供しています。
「Cash Appがライトニングに対応する合理的な2つの理由」でも触れた通り、決済アプリはライトニング対応することでグローバル展開とユースケース増加に貢献します。
そのため、日本の事業者でライトニング決済を受け付けるということは、Cash Appやライトニングを扱えるウォレットサービスに加え、将来的にライトニング対応する決済サービスからの受付も可能になることを意味しています。アプリごとに提携や契約などは必要ありません。
今後増え得るライトニング決済アプリに対して共通の受け口を作ることになります。
まとめ:ライトニング対応でCash Appからの決済受付が可能に
Cash Appは約5,900万人が使うアメリカの送金アプリです。送金アプリの海外展開にはライセンスの壁がありますが、ライトニングに対応すれば各国のライセンスの障壁なく使い道を広げられます。
日本ではCash Appからの米ドル決済は受け付けられません。しかし、日本の事業者がライトニング決済に対応すれば、Cash Appの利用者から支払いを受けられます。
同じ動きはほかのアプリにも広がる可能性があり、ライトニング対応という1つの対応で複数アプリからの決済受付を可能とします。ライトニングに対応して、Cash Appからの決済流入を獲得しましょう。
日本ビットコイン産業株式会社では、モノやサービスをさらにグローバルへと販売していきたい事業者に向けたライトニング決済インフラ「aurora」の構築を進めています。本稿を読んでライトニング決済の導入にご興味があれば、お気軽にご相談ください。

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