皆さんはビットコイン決済が世界中で近年盛り上がってきていることをご存知ですか?

これまで様々な理由で普及が進んでこなかったビットコイン決済が、ビットコイン送金の安定性・速度・コストなどを大幅に改善する「ライトニングネットワーク」と呼ばれる技術の成熟によって実用性が見直され、世界中で徐々に広がってきています。

例えば最近だと、店舗決済大手のSquareが米国のすべてのマーチャントにおいてビットコイン決済を有効化すると発表しています。

Square Begins Automatic Bitcoin Payment Rollout To Millions
Square began automatically enabling bitcoin payments for eligible U.S. sellers today.

日本ではまだあまり馴染みがないかもしれませんが、ライトニング対応のウォレットも数十種類存在し、世界では大手の取引所の多くがライトニングネットワーク経由の入出金に対応しているなど、合計では数億ユーザーが利用可能な決済・送金手段となっています。

実際、River社の推計によると、2025年11月の時点でライトニングネットワークを使った月間の決済・送金金額の合計は11.7億ドル、日本円にして約1850億円に達しているそうです。

この記事でビットコインの実用性を大幅に高めたライトニングネットワークについて学び、「ビットコインは決済用途には向かない」という、ここ数年で覆されている認識を更新していきましょう

ビットコイン決済が従来抱えていた4つの課題

実は、10年ほど前は日本国内でもビットコイン決済の可能性が注目されており、様々な試みがなされていました。例えば、ビックカメラでは2017年4月に全店舗でビットコイン決済を導入しています。当時は手数料の安さやインバウンド客にとっての使いやすさが注目されていたのかもしれません。(皆さんは海外旅行中にクレジットカードが使えなかった経験がありませんか?)

ビックカメラ、仮想通貨を店頭で利用開始 - 日本経済新聞
ビックカメラは2017年4月7日、ビックカメラ有楽町店とビックロ ビックカメラ新宿東口店で仮想通貨のビットコインによる決済を試験導入した。ビットコイン取引所の国内最大手であるbitFlyerが提供する決済サービスを採用。来店者はビットコインを量販店の店頭で利用できる。 午前10時の開店と同時に、各フロアに用意したビットコインの決済端末で支払えるようにした。決済額は最大で10万円相当までで、決済

残念ながらビックカメラに決済サービスを提供するbitflyer社の事情により、2023年からは通常のビットコイン送金による決済はできなくなり、bitflyer社の口座から引き落とす形となっているようです。これだとインバウンド客には使えません。

話を2017年に戻すと、ビットコインは新しい決済手段として期待はされていたものの、当時の技術だと様々な課題を抱えていました。ここに4つほど記してみます:

課題1:決済の所要時間

まずは決済の所要時間です。ビットコイン送金がブロックチェーンに取り込まれるまで平均で10分間、場合によっては数十分以上かかります。

また、決済金額によっては追加で一定時間待たされることもあり、ビットコイン決済で商品を購入するときにレジの横で1時間以上待つ可能性がありました。家でのネットショッピングならまだしも、実店舗では大きな不便です。

課題2:価格の変動(ボラティリティ)

着金までの所要時間が長いと、その間に価格変動が大きくなる可能性が高くなります。例えば着金までに価格が10%下落してしまうと、そこから急いで売却したとしても売上が想定より10%少なくなってしまいます。(もちろん逆に10%増えることもあります)

特に2017年は現在と比べると価格のボラティリティが高かったので、この問題が印象に残りやすかったかもしれません。

課題3:送金手数料の高騰

送金手数料自体の問題もあります。平常時はけっこう安いのも事実ですが、特に2017年の後半にはビットコインの送金手数料が高騰し、数千円相当になった時期がありました。

クレジットカード決済では店舗側に最低3%ほどの手数料がかかりますが、例えばビットコインの送金手数料が1万円だと一度の決済金額が約33万円以上でなければ手数料の面で優位性はありません。それに、そもそもビットコインの場合は手数料を支払うのが商品の購入者なので、その分値段を割り引いてあげないと店舗が得をする分だけ購入者は損をしている気持ちになるかもしれません。

ビットコインのブロックチェーンを使用したときにかかる送金手数料は送金需要に応じて変わる、いわゆる「時価」のものなので、決済のタイミングに大きく左右されてしまいます。

課題4:スケーラビリティ問題

ビットコインはその分散性を守るためにあえてブロックチェーン層での処理能力が限られています。その結果として、一定以上に送金需要が殺到すると手数料が高騰し、決済の所要時間が伸び、決済を受け付ける事業者が価格変動リスクにさらされる期間が長くなってしまうという上記の三重苦に陥ってしまいやすいのです。

分散性を犠牲にせずにいかに送金処理能力を向上するかという、この問題をスケーラビリティ問題と呼びます。

ライトニングネットワークがビットコイン決済の課題を解決

さて、上記の課題が残ったままだと、ビットコインを決済用途に使うのは結構難しいです。ありがたいことに、2018年初めに登場したライトニングネットワークという新しい技術と、その後8年間の利用ノウハウ蓄積によってスケーラビリティ問題は大きく改善し、ビットコインの送金は大量・高速・安価に実行できるようになりました。

ライトニングネットワークとは

ライトニングネットワークとは、ビットコインに元から備わっている技術を使って多数の取引をブロックチェーン外で実行し、その最終結果のみを記録することでビットコインの送金処理能力を異次元に高めるビットコインの新技術です。

厳密には、この技術はユーザー間で送金ネットワークを構成するので、そのネットワーク自体をライトニングネットワークと呼びます。

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ライトニングネットワークが扱うのはビットコインのみであり、ライトニングネットワーク独自のトークンなどは存在しません。また、完全に分散型の仕組みであるため、運営者も存在しません。重要なことなので追記しました。

ビットコイン決済の課題が解決した理由

先ほどの課題はすべて、ビットコインのブロックチェーンに大量の送金を書き込もうとすることが原因でした。では、もし安全にブロックチェーンに書き込まない取引が実行出来たら?そんな発想から生まれたのがライトニングネットワークです。

「ライトニングチャネル」と呼ばれるものにビットコインを入金することで、そのライトニングチャネル内での送金はブロックチェーンの承認を待たずとも安全に実行できるようになります。そのため、決済は1秒未満で完了します。すぐに着金するため、すぐに売ることもでき、価格変動の問題も解決します。

ブロックチェーンの手数料を毎回払わないでよいため、特に少額送金は安く済みます。(こちらも送金手数料は市場で決まるので一概には言えませんが、中央値は送金額の0.03%前後だそうです)

また、嬉しい効果として、オンチェーン送金と比べて全世界に送金内容が公開されないためプライバシーも高いとされます。使うウォレットの仕様にもよりますが、商品を買っても相手に自分のアドレスから資産やほかの購買行動が筒抜けにならないことはビットコインを決済に使う上で重要です。

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送金が行われるのはブロックチェーン外と聞くと不安に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、ライトニングネットワークで行われる送金は思い立ったらすぐにブロックチェーンに配信できるほか、不正を行うと残高を没収される仕組みもあるので安心して利用できます。技術的な仕組みについてはまた別の記事で詳しくご紹介いたします。

ライトニングネットワークの導入・活用事例

世界ではビットコイン決済が盛り上がりつつある国と地域がいくつかあります。そのような地域では、2020年頃からすでにビットコイン決済といえばライトニングネットワークを使うことが当たり前になっています。

まだ消費者側でライトニング決済に対応している人が少ない問題こそありますが、カードやQRなど従来の決済手段と比べて手数料が安く、個人情報の取り扱いがなかったり、国際利用に絡む問題が発生しないなど、様々なメリットがあります。

全国規模での決済導入による決済手数料の節約

世界で最もビットコイン決済の導入が進んでいる国はおそらくアメリカです。

冒頭でも紹介しましたが、2026年には決済端末大手のSquareが米国内400万店舗においてビットコイン決済のロールアウトを開始しました。店舗側には特別な操作は必要なく、買い手はライトニングネットワークを通してビットコインを送金し、Squareがドルに換金して店舗の売上とする形です。店舗が希望すれば、売上の一部または全部をビットコインのまま受け取ることもできます。

店舗側が負担する決済手数料は0%~1%と、現金の次に安い決済手段となっており、飲食店など粗利率の低い業界において大きな導入メリットが見込まれます。

全世界からの決済受付とトラブルのない即時入金

オンラインショッピングでもビットコイン決済に対応するメリットは大きいです。例えばカード決済は海外発行のカードの取り扱いに関するトラブルのみならず、不正利用によるチャージバックの横行という問題があります。ビットコイン決済は一度入った売上がクレジットカード会社に一方的に没収されることはないので、手数料が安いだけでなく店舗側にとってリスクが小さい選択肢です。

しかも、チャージバック対応の必要性がないので、売上は30日後などではなく即時手に入りますし、客の個人情報を預かる必要がありません。例えばVPN・eSIM販売のNada nadaUseBitcoinは個人情報流出リスクなしで買い物できます。個人情報が必要なクレジットカード決済よりも現代のインターネット環境に向いているのかもしれません。

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チャージバックとは、不正利用が発覚したとき、不正利用による売上が店舗側から没収されることです。その時点で既に商品を発送してしまっていた場合、店舗側の視点では商品と売上の両方を盗られてしまい、損してしまいます。日本での不正利用被害額は年間540億円以上といわれ、その少なくない割合が店舗側の損失になっています。

ブランディング面のメリット

ビットコイン決済が売上増につながった事例もあります。Steak 'n Shakeというハンバーガーチェーンはライトニングによるビットコイン決済を導入し、ビットコインをブランディングにも多用した結果、ビットコインによる売り上げは決済手数料が半額で済んだのみならず、売上自体が1年で10%以上成長しました。

Steak ’n Shakeのビットコイン戦略|ビットコイン決済導入から財務活用まで
Steak ’n Shakeが全米約400店舗で導入したビットコイン決済。その後の売上増加、手数料削減、企業トレジャリーへの組み込み、従業員ボーナス制度まで、企業におけるビットコイン活用事例を解説します。

また、まだ自治体レベルでビットコイン決済が盛んな地域は多くないため、町おこしに使われているケースもあります。

エルサルバドルではビットコインを国策にすることで欧米からの投資や移住者を集めたり、スイスのルガーノ市では決済だけでなく納税にも使えるようにしてビットコイン関連企業の誘致につなげたりしています。Bitcoin BeachやTokyo Bitcoin Baseのような施設が中心となって町おこしにビットコインを活用する余地も、世の中にはたくさん残されているでしょう。

日本国内でのビットコイン決済のポテンシャル

日本は先進国の中でも比較的ビットコイン決済の普及が遅れています。ボランティアがビットコイン決済可能な店舗を地図に追加するBTC Mapによると、日本国内にはビットコイン決済が可能な実店舗は68か所しかありません。

もちろん、ビットコイン決済は実店舗に限りませんが、ビットコインを手元で管理して新しい決済手段として試そうという人が比較的少ないのは、決済手段に対する課題意識があまりないからかもしれません。実際、日本居住の日本人が国内で決済手段に困ることはそう多くないでしょう。

そんな日本でも、ライトニングネットワークによるビットコイン決済を導入することでメリットがあるユースケースが考えられます。

デジタルコンテンツの海外市場開拓

日本はデジタルコンテンツに強みをもつ企業がかなり多く存在しますが、必ずしも海外市場への展開をうまくできているとは限りません。海外展開において様々な課題に直面しますが、その中には決済手段にまつわる課題もあります。

例えば、日本の通販サイトで海外発行のカードが使えずに逃している売上は想像以上に大きいかもしれません。コンテンツによってはVISA/Mastercardなどのネットワークの求めに応じて内容を改変したり、販売を断念する場合もあります。

ビットコイン決済であれば、不正利用リスクなどを負うことなく、海外市場からの決済を広く受け入れられる可能性があります。ライトニングネットワークにアクセス可能な人口が数億人規模になった今だからこそ、伸びる余地が大きくなったのではないでしょうか。

顧客・ユーザーとの双方向決済(リワード)

オンライン決済は顧客から事業者への一方通行という固定観念にとらわれていませんか?クレジットカード決済だと、顧客に対してお金を支払うことは難しいことでした。しかし、ビットコインであれば決済の流れを逆方向にすることも簡単にできます。

例えばポイントやマイルをユーザーがビットコインに変えることができる仕組みを作ったり、ユーザー間のマーケットプレイスにビットコインを取り入れることさえできるかもしれません。

ライトニングネットワークを使ったビットコイン決済は、これまでの決済手段では実現できなかった、新しい顧客体験を提供できる可能性を秘めています。

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ヤップアイランドというアプリでは、ビットコインに関するクイズに答えることで利用者が少額のビットコインを得ることができます。少額からビットコインを手元に出金することができるのも、ライトニングネットワークがあってこそ実現した機能です。

まとめ

このように、ライトニングネットワークの登場によってビットコインは決済においても実用的な性能を手に入れており、世界では徐々にその利用価値が見出されてきています。日本ではこの流れは始まったばかりですが、同様に海外との商取引や新しい決済体験・リワード体験を通してビットコイン決済ならではの価値を実現できると期待しています。

ライトニングネットワークを専門とする技術者が在籍する日本ビットコイン産業株式会社では、ビットコイン決済の導入支援やビットコインを活用した事業開発のご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。