今週はOpendimeという、物理的ビットコインの進化系のようなプロダクトの概要と、それがどう画期的なのかについて書きます。

Opendimeとは

カナダのCoinkite社が3つで$45ほどで販売している、秘密鍵が「封入」されたUSB型デバイスで、デバイス上にあるチップを不可逆的に破壊しないと秘密鍵が公開されないため、このチップが無事な限りトラストレスに秘密鍵ごとビットコインアドレスを譲渡することを可能にするデバイスです。

例えるなら、誰にでも検証可能で譲渡可能だが、ビットコインを取り出すには壊す必要のある貯金箱のようなものです。

物理的ビットコインとの違いは製造者も秘密鍵を知らないという点と、秘密鍵を確認せずとも偽造でないことを確かめられるトラストレス性です。

USBメモリのようなシンプルな使用感が特徴で、最初に秘密鍵をセットアップするときはファイルをドラッグ&ドロップするなどしてユーザーがエントロピーを提供し、その後はフォルダ内のHTMLファイルに記載のアドレスとQRコードで入金することになります。

秘密鍵を取得後は、秘密鍵が公開されたという警告文とともに、秘密鍵を含むテキストファイルが現れます。ドライブ自体が読み取り専用になっており、外部から編集できません。

使い方の例:
・誰かにビットコインをプレゼントしたいときや、直接対面でビットコインと何かを交換したいとき。その場で検証でき、物理的に譲渡すれば秘密鍵も完全に譲渡される。
・コンピューターの外部で安全に秘密鍵を生成したいとき。
・0.1BTC、0.01BTCなどキリの良い単位を入れ、貨幣のように使用。
・完全にオフチェーンで記録が残らない取引をしたいとき。
・記録が残らないオフラインな交換所の商品として。向いてない使い方:
・秘密鍵の封印を解かなければリカバリー用のバックアップができないので、ハードウェアウォレットのような多額の貯金には向かない。(チップの耐久性は高く25-100年持つと主張されているが、やはりバックアップ不可は…)
・秘密鍵の解放後に使い続けること。秘密鍵を取得するとデバイス上の平文テキストファイルに格納されるため、保管や使用に注意を払う必要あり (安全性が確保できていないコンピューターで使用せず、オフラインのデバイスを利用してエアギャップするなど)

参考:https://opendime.com/

画期的な点

Opendimeを使えば、オフチェーンで秘密鍵の所有権をトラストレスに移動することができます。今までなら前の所有者に秘密鍵のバックアップを取られている可能性があるため他人の作った秘密鍵を使うことは大いに危険でしたし、そのため他人からビットコインを譲り受ける場合は必ずブロックチェーン上に送金記録が残っていました。

さらに、ウォレットから送金し、数承認待つステップが必要でした。しかし、Opendimeを使えば非常に簡単に、そして安全に、記録も残らないオフチェーンでの譲渡が可能になります。

規制との関係

世界的な規制の流れとして、交換業者などの事業者がやりとりするアドレスと個人を結びつける動きがありますが、Opendimeを使えばアドレス自体の所有権(秘密鍵)をブロックチェーンに記録を残さずに譲渡可能なので、この規制の設計にある「アドレスの所有者は永久に同じ」という前提が崩れます。

ただし、送金時点、つまり封印されている秘密鍵を取得した時点からはトラストレスに移転することができなくなるので、ブロックチェーン上のアクティビティは同一ユーザーと考えられるため、一度秘密鍵を使った場合はプライバシー面でリユースは推奨されません。あくまで所有権が移転可能な貨幣または貯金箱のような使い方が想定されているようです。

技術的なFAQ

Q:一度壊したデバイスは、「修復」できないのか。
A:破壊時に内部的に不可逆的な変更が加わるので、一度秘密鍵が公開されれば公開されたままとなる。

Q:偽造品かどうか確かめる方法はあるか。
A:数種類方法がある。まず、フォルダ内に秘密鍵で署名されたメッセージがあるので、表示されているアドレスが正しいか確かめられる。また、V2以降のOpendimeは偽造確認専用の秘密鍵を格納する偽造防止チップがあり、Coinkiteが公開する公開鍵を利用してCoinkiteが生産したデバイスなのかを確認できる。さらに、物理的に改造されていないか確認できるよう、透明な包装になっている。

Q:同じファイルを使ったら同じ秘密鍵ができるのか。
A:ユーザーが提供するファイルから得る256キロバイト分のエントロピー以外にも256バイトのエントロピーを数種類の方法で生成し利用しているので、複数のOpendimeを同じファイルを利用してセットアップしてもどれも同じ秘密鍵にはならない。

他の質問はFAQへ https://opendime.com/faq

最後に

Opendimeは物理的ビットコインをトラストレスにした進化系アイテムとして新ジャンルを開拓しているのではないかと思います。このようなアイテムは規制強化が追い風となり、他社からも出てくるかもしれません。送料込みで1個2000円程度という金額が安いか高いかは判断が分かれるところかもしれませんが、今回の記事にまとめたとおりのユニークな価値を提供していると考えます。