今週のコラムはLightning Networkの利用に関わるオンチェーンのトランザクションコストを大幅に削減する技術について書きます。

Lightning Networkに対する批判でよく聞く「でもLNを使うのにオンチェーントランザクションが必要で結局コストがかかるやん」という主張は現時点では完全には間違いとは言えません。

しかし、この負担は長期的には技術的な進歩によって削減されていくものです。

今回紹介する技術のトレンドとして「多くのチャンネルの開閉・入出金を集約する」があるので、先月寄稿させて頂いたシュノア署名に関する記事につながるので、ぜひ意識して読んでみて下さい。

LNの超基本的なおさらい

Lightning Networkの一番単純な利用形態はオンチェーンで誰かとチャンネルを開き(入金)、その相手経由で誰かに送金することです。しかし、LNで支払いを受け付けたいときは、自分が持ついずれかのチャンネルの「相手方の方に」残高(自分から見てインバウンドキャパシティ)がないといけません。

自分が単独で入金してチャンネルを作成すると最初は全部自分の方に残高(アウトバウンドキャパシティ)があるので、先に支払いをしないと、自分が受け取ることはできません。(ちなみに、各チャンネル内に資金がロックされる仕組み上、受け取りも支払いも、最大で自分が直接関わるチャンネルに入っている金額の総額が限度です。)

Dual-funded channelといってチャンネルの双方のユーザーがチャンネル開設時に入金することもできますが、チャンネルに入金して資金が拘束されることは時間的コストがあるので相手に十分なメリットがなければ相手にしてもらえないでしょう。

そのため、チャンネルの入出金のコスト低下はLNの流動性向上を目指す上で大きな課題となっています。

※インバウンドキャパシティを作る裏ワザとして、現在はtippin.meのようなカストディアルなLNウォレットから自分のノードへとチャンネルを張る方法や、BitrefillのThorのような手数料を払ってチャンネルを開設してもらうサービスを利用する方法があります。少額取引に利用するケースが多いLNですので、手数料が一番かからないソリューションを探すのがいいと思います。

Splicing, Channel Factories

LN利用におけるオンチェーンTXの回数を減らす技術的な方法・提案にはSplicingやChannel Factories, Lightning Loopなど様々なものがあります。

・Splicing - 普通は別々のトランザクションであるチャンネルのクローズとオープンを1つのトランザクションにまとめることによって、チャンネルを完全にクローズせずに部分的な入出金を可能にする。

・Channel Factories - LNとブロックチェーンの間に新たなレイヤーを作り、複数人のチャンネル作成を1つにまとめる(必要なオンチェーンTX総数を減らす)。Splicingと組み合わせることで、オンチェーンTX1つで自由に入出金が行える。

Lightning Loop, Hyperloop

今年3月にLightning Labsより発表されたLightning Loopは、アルファ版が発表されているLoop Outと未発表のLoop Inの2つの機能からなります。サブマリンスワップというオンチェーンとオフチェーンのビットコインをトラストレスに交換する技術を使い、Loop OutならLN上のビットコインと引き換えにオンチェーンのビットコインを受け取ることができます。(Loop Inはその逆)

1回のスワップにつきオンチェーンのトランザクションが1回で済みます。5月末に提案されたHyperloopはサブマリンスワップを工夫することでLightning Loopをさらに効率化するアイデアで、(Schnorr署名の導入でとても簡単になる)署名集約を使って複数のスワップを集約することでネットワークの負担を軽くしたり、多くのチャンネルを持つ人の各チャンネルの資金の入出金や調整をやはり署名集約やbase AMP (Atomic Multi-path Payments; 複数のチャンネルを活用して大きな送金を受け取る方法)を活用してコストダウンするものです。

base AMPを使えば入出金に関わるチャンネル数を減らすことができるので、単純なSplicingより格段に安くなります。

おわりに

トレンドとしての「集約」を感じていただけたでしょうか。
先月紹介させていただいたように、シュノア署名が導入されれば今回紹介した中で多くの参加者の行動を1つの(小さな)トランザクションに集約するタイプのソリューションは簡単に実現できるようになりそうです。そうなると、LNチャンネルの開設等に関わるコストは今よりかなり小さくなっていくのではないでしょうか。

また、細心の注意を払って調べましたが、LNの技術は日進月歩なので、もし間違ってたら教えて下さい。